本文へスキップ / Skip to content

VASデータをExcelで整理・確認する基本

計測結果を扱いやすく整理し、確認するための基本的な流れを紹介します。

約8分

VAS(Visual Analog Scale)で収集したデータは、測定して終わりではありません。被験者、条件、評価項目、反復回数などを正しく整理し、欠測や入力ミスがないかを確認してから解析へ進む必要があります。

このページでは、VASデータをMicrosoft Excelなどの表計算ソフトで扱う際の基本的な考え方を解説します。

まず、元データをそのまま保存する

出力したファイルは、編集を始める前に原本として保存しておきましょう。

たとえば、次のように分けて管理します。

  • StudyA_export_original.xlsx
  • StudyA_export_working.xlsx
  • StudyA_analysis.xlsx

原本を直接編集すると、並べ替えや数式入力、セルの上書きによって、測定時の情報を失う可能性があります。解析用の加工は、必ずコピーしたファイルで行うことをおすすめします。

ファイル名には、プロジェクト名、出力日、データのバージョンなどを含めておくと管理しやすくなります。

VASデータの基本構造を確認する

VASデータは、一般に「1行が1回の回答」を表す縦長の形式で保存すると扱いやすくなります。

各行には、次のような情報が含まれます。

  • 被験者IDまたはセッションID
  • 測定日時
  • 条件・刺激の名称
  • VAS評価項目
  • 試行番号、反復番号
  • VAS値
  • 実際の提示順
  • 割り当てられた提示順パターン
  • 回答時間
  • 欠測、スキップ、中断などの状態

たとえば、条件A・B・Cについて「心地よさ」と「刺激性」を2回ずつ測定した場合、1人の被験者について複数の行が作成されます。

この形式では、Excelのフィルターやピボットテーブルを使って、条件別、評価項目別、被験者別に集計できます。

被験者IDと条件名を確認する

最初に、被験者IDやセッションIDに重複や入力揺れがないかを確認します。

たとえば、同じ被験者を表すIDが次のように混在していると、別の被験者として集計される可能性があります。

  • P001
  • P-001
  • p001

条件名や評価項目名についても同様です。途中で表示名を変更した場合でも、内部のIDが保存されていれば、名称だけでなくIDを基準に整理する方が安全です。

表示名は人が理解しやすく、IDはデータの対応関係を維持するために使われます。

VAS値の範囲を確認する

VAS値が、設定した最小値と最大値の範囲内に収まっているかを確認します。

0から100までのVASであれば、基本的にはすべての回答が0以上100以下になるはずです。ただし、プロジェクトによっては0から10、−100から100など、異なる範囲が設定されることもあります。

そのため、単に「100を超えていないか」だけでなく、各測定で設定されていた最小値・最大値も併せて確認することが重要です。

異なる範囲のVASを統合して解析する場合には、そのまま比較できるか、事前に尺度を換算する必要があるかを検討してください。

未回答と「0」を区別する

VASでは、左端を選択した回答が数値の0として記録されることがあります。一方、未回答や測定中断は、回答値そのものが存在しません。

したがって、未回答を0に置き換えてはいけません。

  • 0:被験者が左端を回答として選択した
  • 空欄・欠測:回答が得られていない
  • スキップ:意図的に回答を省略した
  • 中断:測定が途中で終了した

これらは分析上の意味が異なります。VAS値だけでなく、回答状態を示す列も確認し、欠測値の扱いを決めてから集計してください。

実際の提示順と条件別の順序を分けて考える

条件の提示順を被験者ごとに変える研究では、画面上で実施された順序と、解析時に整理したい条件の順序が異なります。

たとえば、3つの条件A・B・Cを次のような順番で提示したとします。

  • 被験者1:A → B → C
  • 被験者2:C → A → B
  • 被験者3:B → C → A

測定経過を確認するときは、実際の提示順が重要です。一方、条件ごとのVAS値を比較するときは、全被験者をA・B・Cの共通順にそろえた方が扱いやすくなります。

このため、次の情報は分けて保持します。

  • 何番目に提示されたか
  • どの条件だったか
  • どの提示順パターンが割り当てられたか

解析用に列を並べ替えた後も、実際の提示順を示す情報は削除しないでください。順序効果や疲労、慣れの影響を検討する際に必要となります。

フィルターを使ってデータを確認する

Excelのフィルター機能を使うと、特定の被験者、条件、評価項目だけを表示できます。

確認しておきたい項目には、次のようなものがあります。

  • 特定の被験者だけ試行数が少なくないか
  • 条件ごとの回答数が一致しているか
  • 一部の評価項目だけ欠測が多くないか
  • 同じ試行が重複して記録されていないか
  • 中断後に再開されたセッションがないか
  • 回答時間が極端に短い、または長い記録がないか

回答時間が短いからといって、直ちに無効な回答とは限りません。除外する場合は、研究計画で定めた基準に従い、除外理由を記録しておく必要があります。

ピボットテーブルで概要を確認する

ピボットテーブルを使うと、データ全体の概要を簡単に確認できます。

たとえば、次のような集計が可能です。

  • 条件ごとのVAS平均値
  • 評価項目ごとの回答数
  • 被験者ごとの欠測数
  • 条件と反復回数ごとの平均値
  • 提示順ごとの回答傾向

ただし、平均値だけを見て元データの確認を省略することはできません。同じ平均値でも、ばらつきや欠測数、外れた回答の有無によって解釈は変わります。

最初に回答数や欠測状況を確認し、その後に平均値や標準偏差などを確認すると安全です。

横長データへ変換する場合

統計ソフトや解析方法によっては、1行を1被験者とし、条件や評価項目ごとに列を分けた横長形式が必要になることがあります。

たとえば、次のような列を作成します。

Participant IDPleasantness_APleasantness_BPleasantness_C
P001725431
P002686129

この形式は条件間比較には便利ですが、反復回数や提示順、中断情報などを表現しにくくなる場合があります。

そのため、縦長の元データは残したまま、解析目的に応じて別シートまたは別ファイルに横長データを作成するのが基本です。

複数回の反復測定がある場合は、平均値にまとめる前に、どの試行を採用するか、反復を独立した測定として扱うかを研究計画に基づいて決定してください。

数式を値として上書きしない

Excelで条件別の値を抽出したり、平均値を計算したりするときには数式を使用できます。しかし、元の測定値が入っているセルに数式を入力すると、元データが失われます。

計算列は右側に追加するか、解析用の別シートを作成してください。

また、数式を含むファイルを他のソフトへ読み込む場合、計算結果が正しく反映されないことがあります。解析ソフトへ移す前には、数式が参照している範囲や欠測値の扱いを確認します。

日付やIDの自動変換に注意する

Excelは、入力された値を自動的に日付や数値へ変換することがあります。

たとえば、次のようなIDは意図しない形式に変換される可能性があります。

  • 1-2
  • 3/4
  • 00123
  • 長い数字だけで構成された識別子

被験者IDや条件IDは、文字列として扱う方が安全です。特に先頭の0が必要なIDでは、Excelで開いた際に0が削除されていないかを確認してください。

CSVファイルを直接ダブルクリックして開くと、自動変換が起こる場合があります。重要なデータでは、Excelのデータ取り込み機能を使用し、列の形式を指定して読み込む方法も検討してください。

加工内容を記録する

データを修正、除外、変換した場合は、その内容を記録します。

記録しておくとよい項目は、次のとおりです。

  • 加工した日付
  • 作業者
  • 使用した元ファイル
  • 除外したセッションや試行
  • 除外理由
  • 欠測値の処理方法
  • 反復測定の集約方法
  • VAS値の換算方法
  • 使用した数式や解析手順

研究結果の再現性を保つためには、完成した表だけでなく、どのように加工したかを追跡できることが重要です。

rVASから出力したデータを扱うとき

rVASは、被験者、条件、評価項目、試行、提示順などを識別できる形式でデータを出力します。

解析前には、少なくとも次の点を確認してください。

  1. 対象となるプロジェクトが正しいか
  2. 必要なセッションがすべて含まれているか
  3. 被験者IDに重複や入力揺れがないか
  4. 条件、評価項目、反復回数が設定どおりか
  5. 欠測、スキップ、中断がないか
  6. VAS値が設定範囲内か
  7. 実際の提示順と条件IDの対応が正しいか
  8. アプリバージョンとデータ形式バージョンを記録したか

rVASでは、ランダムな提示順で測定したデータについても、各回答がどの条件に対応するかを判別できるように設計しています。

実験時の提示順を保存しながら、解析時には条件ごとの統一された順序で整理できるため、順序情報を失わずに集計を進められます。

まとめ

VASデータをExcelで扱う際に最も重要なのは、測定値だけを抜き出してすぐに平均を計算することではありません。

まず、次の点を確認します。

  • 元データを変更せずに保存する
  • 被験者、条件、評価項目の対応を確認する
  • 未回答と0を区別する
  • 実際の提示順を残す
  • 欠測や中断を確認する
  • 加工内容を記録する

これらの確認を行うことで、入力ミスや集計間違いを減らし、再現可能な形でVASデータを解析できます。

rVASは、VASの作成、測定、データ保存、XLSX出力までを一つのアプリ内で行い、紙のVASで必要だった定規による測定や手作業での転記を減らすための研究支援ツールです。

本記事は一般的な情報提供を目的としています。研究・測定への適用にあたっては、目的に応じた妥当性の確認をお願いします。

研究用VASアプリ「rVAS」VASの設計・実施・出力を iPad 一台で。14日間の無料トライアルがあります。